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あらゆるヒト、モノ、コト、トキをジャーニーで可視化

モノのジャーニー

 カスタマージャーニーは「モノの購買」という限定されたテーマにおける1つのジャーニーのパターンです。来店やお問い合わせなどもゴールとして設定されますが、基本的には商材やサービスの特定ブランドが与件となり、それに係る顧客の購買行動や意思決定プロセスを扱います。飲料や食品、日用雑貨といった一般消費財から、医薬品、テレビ、カメラ等の電気製品、車、白物家電、家具や住設機器、インテリア、保険/金融商品、他にも音楽やゲーム、映画などのエンタテインメント、遊園地などのレジャー・アミューズメント施設、スマホゲームの課金や有料アプリの購入など、あらゆる一般消費財・耐久消費財・サービスのリアルな「買われ方・選ばれ方」をカスタマージャーニー化することができます。

選択系ジャーニー

 「何かを選ぶ」という選択におけるジャーニーも考える事ができます。例えば、大学を選ぶ、塾を選ぶ、美容室を選ぶ、レストランを選ぶ、就職先を選ぶ、などが選択系ジャーニーにあたります。選択系ジャーニーの場合、意思決定プロセスをジャーニーマップで把握し、プロセス上重要な局面においてターゲット層の選択基準に合わせた情報を提供する事で、自社が選ばれるように見込み客をナーチャリングする、というのがメインの活用方法となります。また、自社ブランドが考慮集合や選択集合に選ばれる、もしくは外されるプロセスとその要因を分析し、選択確率を上げる為の戦略構築にも利用されます。後者はカスタマージャーニー全体のマネジメントと言うより、選択場面の顧客接点でどう対応するか、というどちらかというとマイクロモーメント的な考え方を表現するジャーニーになります。

コトのジャーニー

 モノの購買や選択は、より大きな文脈で捉えれば生活文脈の中で起こるある一点の前後を切り出したジャーニーです。コトのジャーニーは、購買のジャーニーに比べ、より生活者の「生活」の実態についてより多くの洞察を得る事ができます。化粧品というモノについてのジャーニーでも、「休日に家族で海水浴に出かける」「海外旅行に行く」「転職の面接に行く」「休日友人とレストランでディナーを楽しむ」など経験シーンをジャーニーとして可視化し、その中でモノがどこでどんな意味を持つのか、どんな生活課題に対して直接・間接的な価値を感じてもらえているのか、を把握する事が有用な場合もあります。例えば、「海に行く途中で日焼け止めをコンビニで買う」であれば、後者は海に行くというコトが生活者の主たる目的となりますので、細かく選んでいる時間がないかもしれません。有効成分がオールインワンである事が大きく表示され、今夏限定のコンビニ限定商品で、使いきりタイプで防腐剤が入っていない、などのインサイトがコトのジャーニーから見つかるかもしれません。

生活者主語のジャーニー

 コトという大きな文脈の中で生活者や消費者を理解するという試みは、そのコトと、自社が扱うモノやサービスの距離が近ければ近いほど重要で、近年注目されている手法です。その特徴として、モノの場合は客(購買)という視点で考えますが、コトの場合は"生活者主語"、つまり客ではなく生活者、生活の中の購買として考えます。その為、「カスタマー」の代わりに生活課題や生活場面におけるゴールで呼称するジャーニーが使われる事があります。この先鋒と言えるのがペイシェントジャーニーです。ペイシェントジャーニーは、病気に罹患した人が、診療に行って必要な治療を受け、回復するまでのプロセスを描いたジャーニーです。主に病院や診療所などの医療機関や医療機器メーカー、医薬品メーカーにとって、何をきっかけに診察に行こうと思うのか、患者の行動や気持ち、どのような時にどのような情報や支援が必要なのか、どのような問題を抱えているのかなどを理解する為に重要なジャーニーマップです。

 他にも、旅行に行く人の旅程計画からホテルや航空券の予約、現地滞在中の観光行動、SNSや電話を通した友人や家族との経験共有など旅程全体における体験を描いた「トラベラーズジャーニー」、投資家の情報収集や意思決定プロセス、投資行動を描いた「インベストメントジャーニー」、就職や転職などを通してキャリアを形成していく様子を描いた「キャリアジャーニー」など”コト”もジャーニー化することができます。また、クレームなどのトラブルが発生する原因の構造や、社員のモチベーションの増減など心理的なテーマもジャーニーとして可視化する事が可能です。
 

トキのジャーニー : 新制度やトレンド、トラブル解決など、

時系列変化に焦点をあてたジャーニー

 ビジネスでは、今起こっている物事の全体と主要なプレイヤーの動きを把握し、今後の予測と対応を考えなければいけない場面が発生します。モノ・コトという縛りではなく、”時間”軸が重要なケースです。例えば、市場でヒットしている商品や流行しているものがあり、何故それがブームになっているのか、今後どうなっていくのか予測を立てたい場合や、競合ブランドの施策を分析し、自社のカスタマージャーニーに今度どのような影響が及び、顧客の購買行動が変化していくのかを検討したい場合などです。トキのジャーニーで扱うテーマは、コトのジャーニーで扱うテーマと大部分が共通します。何が違うかというと、関心が構造にあるのか時系列変化にあるのかです。コトのジャーニーの主たる関心は、原因と結果の因果関係や変化の構造です。これに対してトキのジャーニーの主たる関心は、変化の要因が発生する順序や時系列変化、予測です。例えば同じトレンドを扱ったジャーニーでも、そのトレンドが起こった構造や要因の因果関係を知りたい場合はコトのジャーニー、どういう背景でそのトレンドが起こり、現況を踏まえこれからどうなっていくのか、を予測するにはトキのジャーニー、という具合です。

未知の領域、今まで検討してこなかった側面について理解するためのツール

 今まで検討してこなかたった領域にチャレンジする際にもジャーニーマップは役立ちます。例えば、訪日外国人が日本に期待する理想の体験をインバウンドジャーニーとしてパターン化し把握しておく、観光地での満足度が高いインバウンドジャーニーと低いインバウンドジャーニーを比較する、インバウンドジャーニーの変化の分岐点で起こった出来事やきっかけからおもてなしの重要な要因を探る、もしくはそれをノルムとして接客マニュアルやノルムを作成する、という事が考えられるかもしれません。また福利厚生制度を刷新して従業員のモチベーション向上を図りたいが何をするのが効果的なのか分からない、のような場合、他社のベンチマーク事例や成功事例をモチベーションジャーニーとして研究し、自社に応用するという事が考えられます。

 今までとは違う側面に目を向ける事がチャンスにつながる場合もあります。例えば自動車のマーケティングで、世帯収入を稼ぐのは旦那さんなので男性の車に対する趣味嗜好やデザイン志向性、スペックなどを調査分析してきたが、大きな買い物をする場合、意思決定について奥さんの意見が大きなウェイトを占める、属に言う「財布を握っている」場合、奥さんの意思決定プロセスや判断基準を選択ジャーニーを通して知っておくことは、製品開発でもコミュニケーション開発でも重要でしょう。

 少し違う事例で言えば、今後「介護のジャーニーマップ」が重要になってくることが予想されます。介護される側の人口比率が増え、国、地方自治体、病院、企業が協力して取り組むべき課題であり、介護される側が何を求め、どのような感情の動きがどういうきっかけでおこり、それに対して外部の施策がどう影響を及ぼすのか、ジャーニーを通して知る事でジャーニーフェーズに対して効果的な働きかけができるようになります。また、どの部分のケアが足りないのかについても理解が促進されるでしょう。同時に、「介護する側」のジャーニーも同じく重要な情報となるかもしれません。介護をする側も当然初めてや慣れていない作業や感情に直面するため、疲弊してしまうケースも出てきます。このような時、介護をするというのはどのような経験なのかをジャーニーベースで把握できれば、いつどんなケアや支援が必要なのか、対策を練ることができます。

 

カスタマージャーニーNAVIは、「消費者行動図鑑」というサービスと連動しています。消費者行動図鑑では、様々なモノやコトのジャーニーを公開しています。

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​カスタマージャーニーの教科書

2章

カスタマージャーニーの利用範囲、応用領域

 カスタマージャーニーの技法は、実に広範な分野・領域のプロセスマネジメントに有効なツールとなります。日本では主に広告コミュニケーション開発やWebサイトのUX調査などに用いられる「カスタマージャーニーマップ」が有名ですが、製品開発、サービス改善、営業ピッチ開発、社員のトレーニング、人事評価、インターナルマーケティング、空間デザイン、経営計画の立案/評価、公共サービスの改善や再開発、村興しなど、広範なビジネス課題、国や地方自治体の政策、事業など様々な領域に適用可能です。

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